Thursday, May 15, 2014

JP - 点字


初めて点字打ちました。
今まで知らなかった世界を垣間見ることで、人生の視界が広がりました。
見えるということへの有り難みも深まりました。


点字を打つことになった訳は、私がある目の見えない女性にコンピューターの使い方を教えているからです。プライベートレッスンに来られるときは、彼女の息子さんが運転をして連れて来てくれます。今は60代半ばであろうと思われ、もともと日本で生まれ育ちましたが、もうマウイに何十年も住んでいます。どんなにハンディキャップがあろうとも、新しいスキルを得ようという彼女の心意気とやる気には、いつも励まされてきました。

彼女が最初に連絡をしてくれたとき、私はどうやって目の見えない方にコンピューターの使い方を教えたらいいのか、全く分かりませんでした。知っていそうな人々や組織に電話してみたのですが、これといった答えが見つかりませんでした。友人にコンピューターの天才と私が勝手に呼んでいる人がいるのですが、その人が「マックコンピューターについてくる、ボイスオーバーを使ってみたら?」と提案してくれました。そこで、それについて調べました。(これはMacコンピューターに自動的に付いてくるシステムで、コマンドとF5ボタンを一緒に押す事で稼動します。

目の見えない方をサポートする機関に働きかけ、彼女がコンピューターを購入するための資金を出してもらえるように申請しました。幸いなことに承諾され、コンピューターを買うことが出来ました。そして彼女とのレッスンを始める前に、私はボイスオーバーの使い方を習得するため、一人で何時間も練習しました。この経験から改めて思ったことは、「知っている」というだけでは、良い先生になれないということです。教える内容を熟知し、そして自分自身の学びの過程を冷静に観察し、その過程を逆戻りすることが自由に出来るようになると、教えるときにどこで区切ったらいいかが見えてきます。そして自問自答します。「頭上の電球がピカーンと光ったとき(つまり、「理解」が起こった時、何が起こっていたのか?それを生徒たちのために再現できるか?そして何通りの方法でそれを再現できるか?」と。


彼女とのレッスンで一番の難関は、「見えない」ということです。「そりゃそうだろ」とつっこまれそうなほど明らかな事実ですが、レッスンを初めて最初の何回かは、この事実と何度も鉢合わせをしては、「あぁそうだった、見えないんだった」と思い知らされました。「もし見えたなら、今私が画面上で何をしているか、指は何をしているかもっと簡単に理解することが出来るのになぁ。」と何度思ったことでしょう。ボイスオーバーの使い方を独学していたときに気づいたのが、どこに何があるのか、彼女が頭の中に描けるようにまずはしないといけないということでした。なので点字を打つ道具を持ってきてもらって、上の写真にあるようにコンピューターの画面を表したシートを作りました。一つ一つの紙の層がプログラムの形態を表しています。ボイスオーバーを使っているときは、マウスもトラックパッドも使いません。VOキー(コントロールとオプションの二つのキーをVOキーと呼ぶ)と矢印のキーを主に使います。これらで画面上を移動するのです。


これは彼女のアイデアで、あるキーにシールを貼りました。(丸いポッチのとか、マジックテープとか。)これで確定のキーがより簡単に見つけられます。キーボードの打ち方は、私のとこに来られ前に既に知ってらっしゃったので、助かりました。

今、彼女は「コンタクト」(アドレス帳)と「ノート」を使えるようになりました。今は、「カレンダー」をマスターしようとがんばっています。そして次は「メール」です。そうしたらEメールで世界中の人と連絡が取れるようになりますからね。このやる気、すごいですよね。


彼女との貴重なやりとりから、子ども達にも点字について教えよう!と思いつきました。

アルファベットの点字の一覧シートを配り、私から子ども達へ秘密のメッセージを書きました。(下の写真で見えるように、そのメッセージをホワイトボードに転写しました。)「何て書いたでしょうか?」と聞いてみると、みんないそいそと夢中で解読してくれました。

メッセージは「アイラブユー」
そして、これは子ども達(特に女の子)の間でヒットしました。みんな点字でシークレットメッセージをお互いに送り始めました。私もいくつか頂いたので、解読に忙しかったですよ。おかげさまで点字が少しだけ早く読めるようになりました。

点字シートを参照に解読中。

子ども達に手話を教えてきたり、こうして点字に触れてもらったり、コミュニケーションについていつも話してきたことの裏には、色々な障害を持たれた方々への思いやりの心を培ってほしいという願いがありました。そして、障害を持っていなくても、この世には多種多様な人々がいて、色々な考え方をもった人たちとコミュニケーションを取れる人になってもらいたいという願いがありました。コミュニケーションスキルを身に付けることで、必要の無い口喧嘩や、いざこざや、戦争を回避することに繋がると思うのです。

心の目で物事を見ているこの女性とのレッスンを通して、見えるということを当たり前に過ごしてきた有り難さを改めて思いました。私はちゃんと聞こえる耳と見える目を持っていても「聞いて」なかったり、「見て」なかったりします。これからはこれらの機能を、心をちゃんと稼動しながら使いたいとおもいます。そうすることで耳にするもの、目にするもの、全てをしっかりと受け止められますようにと。

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